誰もがその名を知る日本古代史最大級の偉人「聖徳太子」。旧1万円札の代名詞。10人の話を同時に聞き分ける超人的なエピソードは1400年を経て今日に語り継がれています。
他にも「憲法十七条」「冠位十二階」「遣隋使の派遣」など成し遂げた偉業の数々は教科書で習った覚えがあると思います。
文部科学省が2月に公表した小・中学校の学習指導要領の改定案では、小学校において「聖徳太子(厩戸王うまやどのおう)」、中学校において「厩戸王(聖徳太子)」と表記を変更する方針が示されました。
変更の理由は『近年の歴史学において「厩戸王」が一般的であり聖徳太子は後の時代の呼称だから』というものでした。
違和感を覚えた私は、直ちに再考を求める意見を文部科学省へ届けました。
同時的に、小・中学校の教員からも強い異論が出され「小・中で表記が異なれば子供たちが混乱する」「指導の継続性が損なわれる」といった意見が、パブリックコメント(意見公募)として寄せられました。1万1210件も届いたそうです。
結局、この改定案はストップされ表記は元通りの「聖徳太子」に落ち着きました。
NHKの報道によると「聖徳太子」の表記を変更しようとした理由について文部科学省は「新たな事実の発見があったわけではないが、研究者の意見を聞いて文部科学省として判断した」と語っているそうです。
歴史研究者、文部科学省は歴史教育の役割に関する十分な認識が欠けていたのではないかと今更ながら暗澹たる思いにならざるを得ません。
歴史は、国民の意識を継承・維持・発展させるために必要な「国民の物語」として後世へ伝える独自の役割があるはずです。
今回、学習指導要領の改定を防ぎ「聖徳太子」の表記が守られたことは大変良かったですし、今後も小・中学校において歴史教育が適切に行われるよう注意して見守りたいと思います。